英語圏の掲示板やSNSで頻繁に見かける「lol」という文字列。あなたはこれが単なる「笑い」の省略形だと思っていませんか。
実は、2025年の現在において「lol」は、世代や文脈によって全く異なる意味を持つ複雑な言葉へと進化しています。私が長年ネットカルチャーを追ってきた経験から、この言葉の真のニュアンスと正しい使い方を詳しく解説します。
「lol」の基本的な意味と本来の使い方
まずは、教科書的な意味と、ネイティブが日常的に使っている基本的な用法について解説します。多くの日本人が習う定義と、実際のチャットでの使われ方には大きな乖離があるため注意が必要です。
原義は「Laughing Out Loud」|大声で笑う
「lol」はもともと「Laughing Out Loud(声を出して笑う)」の頭文字をとったアクロニムです。1980年代のパソコン通信時代に、カナダのウェイン・ピアソンという人物が、文字だけでは伝わらない「本当に笑っている状態」を伝えるために発明しました。
当時は、本当に部屋の中で声を上げて笑った時だけに使う、非常にリテラルな表現でした。しかし、インターネットの普及とともにその厳密さは失われ、よりカジュアルな言葉へと変化していったのです。
現代では「(笑)」や句読点として機能
言葉は生き物であり、本来の「大声で笑う」という意味は時間とともに薄れていきました。現在では、日本語の「(笑)」や「w」、あるいは会話のトーンを和らげるための「句読点」として使われるケースがほとんどです。
例えば「I’m going to bed lol(もう寝るわw)」のように、文末に添えることで会話をマイルドに終わらせる役割を果たします。実際に笑っていなくても、相手への敵意がないことを示すための「無表情の笑顔」として機能していると言えるでしょう。
大文字「LOL」と小文字「lol」の使い分け
入力する際の大文字と小文字には、感情の強度の違いが表れます。小文字の「lol」は軽い相槌や愛想笑い、大文字の「LOL」は本当に面白いと感じた時の「大爆笑」といったニュアンスで使い分けられています。
相手のメッセージに対して小文字で「lol」とだけ返信する場合、それは「へー、面白いね」程度の軽いリアクションです。逆に「LOL!!!」と大文字で送れば、その面白さが強烈であることが伝わります。
世代で違う?lolのニュアンス変化
「lol」という言葉に対する印象は、ユーザーの年齢層によって驚くほど異なります。特定の世代にとっては必須のコミュニケーションツールですが、別の世代にとっては「古臭い」と感じられることもあるのです。
ミレニアル世代には「怒っていない」サイン
1980年代から90年代半ば生まれのミレニアル世代にとって、「lol」は相手への気遣いを示す重要なクッション言葉です。文末に何もつけずに「Ok.」とだけ送ると、「冷たい」「怒っている」と誤解されるリスクを感じるため、あえて「Ok lol」と添えて友好的な態度を示します。
彼らにとっての「lol」は、もはや笑いという意味を超えて、文章の角を取るためのマナーのようなものです。テキストコミュニケーションで育った世代特有の、過剰なまでの気遣いがそこにあります。
Z世代にとって「lol」は「皮肉」や「古い」
一方で、デジタルネイティブであるZ世代やそれ以降の若者にとって、文末の「lol」は時に「おじさん・おばさん構文」のように映ります。彼らは「lol」を皮肉っぽく「はいはい(笑)」という意味で使ったり、そもそも使用を避ける傾向にあります。
特に、面白くもない場面で「lol」を多用するのは、必死に若作りをしているように見えるため注意が必要です。若い世代とのチャットでは、無闇に「lol」を使わず、文脈に合わせたリアクションを心がけるのが賢明でしょう。
最新の笑いは「💀」や「IJBOL」へ
では、若者は「大爆笑」をどう表現しているのでしょうか。2025年のトレンドでは、笑いすぎて死ぬという意味の「💀(ドクロ)」の絵文字や、「IJBOL(I Just Burst Out Laughing)」という新しいスラングが主流になりつつあります。
「IJBOL(イージュ・ボール)」はK-POPファンダムから広まった言葉ですが、実際に吹き出した時に使われるリアルな表現です。「lol」が形骸化した今、より強い感情を伝えるために新しい言葉が次々と生まれています。
日本語スラング「w」や「草」との比較
日本のインターネットスラングと英語の「lol」には、驚くべき共通点があります。言語は違っても、デジタル空間でのコミュニケーションが辿る進化の道筋は似ているのです。
「(笑)」から「w」への進化と同じプロセス
日本語でも「(笑)」がローマ字入力の効率化で「w」になり、さらに連打されるようになった経緯があります。「lol」も同様に、入力のしやすさから普及し、やがて本来の意味よりも「記号」としての役割を強めていきました。
また、「w」が連なって「草」という視覚的なスラングに変化したように、英語圏でも文字以外の表現への移行が進んでいます。どちらの言語でも、感情を効率的に、かつ的確に伝えようとするユーザーの工夫が見て取れます。
日英「笑い」の強度比較表
それぞれの表現が持つ笑いの強さを比較すると、使い分けの感覚がより掴みやすくなります。以下の表を参考に、場面に応じた適切な「笑い」を選んでみてください。
| 英語表現 | 日本語相当 | ニュアンス |
|---|---|---|
| haha / hehe | (笑) / ふふ | 最も標準的で無難 |
| lol | w / (笑) | 軽い笑い|緩和剤 |
| LOL | www / ウケる | 明確な面白さ |
| LMAO | 草 / クッソワロタ | 強い笑い |
| 💀 (Skull) | 草不可避 / 森 | 死ぬほど面白い |
知っておくべき「笑い」以外のlol
「lol」という文字列を見た時、それが必ずしも笑いを意味するとは限りません。特定の趣味やエンタメの文脈では、全く別の固有名詞を指している場合があるため、文脈を読み解く力が求められます。
世界的ゲームタイトル『League of Legends』
ゲーマーの間で「LoL(ロル)」と言えば、間違いなく人気PCゲーム『League of Legends』のことです。「LoLやろうぜ」というメッセージは、決して「一緒に笑おうぜ」という意味ではないので注意しましょう。
一般的にゲームを指す場合は、頭文字を大文字にして「LoL」と表記されることが多いです。しかし、チャットではすべて小文字で打たれることも多いため、前後の会話から判断する必要があります。
アーティスト『lol-エルオーエル-』と2025年の解散
日本の音楽シーンにおいては、エイベックス所属のパフォーマンスグループ「lol-エルオーエル-」を指します。ファンにとって重要なニュースとして、彼らは2025年6月のライブをもって解散することが発表されており、現在の検索意図にはこの話題も強く含まれています。
「lol 意味」や「lol 解散」といった検索が増えているのは、このニュースの影響が大きいでしょう。彼らのグループ名は「人を笑顔にする」という由来を持っていますが、ファンにとっては涙を誘うキーワードになっているのが現状です。
まとめ
ここまで「lol」の持つ多層的な意味と、時代による変化について解説してきました。たった3文字の単語ですが、そこにはデジタルの歴史と、円滑な人間関係を築こうとする人々の工夫が詰まっています。
あなたが次に「lol」を使う時は、それが単なる笑いなのか、あるいは気遣いのサインなのか、少しだけ意識を向けてみてください。言葉の背景を知ることで、画面の向こうにいる相手との距離が、ほんの少し縮まるはずです。
もしあなたがZ世代の部下や海外の友人とやり取りをする機会があるなら、あえて「💀」を使ってみるのも面白いかもしれません。

