日常的に使うブラウザだからこそ、その開発国やデータの取り扱いには敏感になるべきです。私がBraveブラウザを使い始めた当初、最も気になったのが「どこの国のアプリなのか」という点でした。
ネット上では「中国製ではないか」という噂もちらほら見かけますが、結論から言えばそれは誤解です。本記事では、Braveの複雑な運営実態を紐解き、安心して使えるツールなのかを検証します。
『Brave』の開発会社はアメリカ企業|基本情報を整理

Braveブラウザの開発元は、紛れもなくアメリカ合衆国の企業です。多くのユーザーが懸念する「正体不明のアプリ」ではなく、シリコンバレーに拠点を置く技術者集団によって作られています。
本社所在地はサンフランシスコ|シリコンバレーの中心
Brave Software, Inc.の本社は、カリフォルニア州サンフランシスコにあります。具体的な住所は「580 Howard St. Unit 402」であり、ここはテクノロジー企業の聖地とも呼ばれるエリアです。
法的な登記はデラウェア州で行われていますが、これはアメリカのIT企業にとって一般的な戦略といえます。デラウェア州は会社法が整備されており、多くのスタートアップが登記を行う場所だからです。実質的な開発や経営判断は、サンフランシスコのオフィスを中心に行われています。
創業者は伝説的なエンジニア|JavaScriptの生みの親
開発企業の信頼性を担保するのは、その創業者であるブレンダン・アイク(Brendan Eich)氏の存在です。彼はWeb業界にいれば知らぬ者はいないほどの重要人物といえます。
プログラミング言語「JavaScript」の開発者であり、Firefoxブラウザで有名なMozillaの共同創設者でもあります。私がBraveを信頼する最大の理由は、Webの標準を作り上げてきた彼が「現在のWeb広告のあり方」を変えるために立ち上げたプロジェクトだからです。どこの誰だかわからない人物が作ったツールとは、根本的に信頼度が異なります。
中国との関係性はゼロ|なぜ噂が流れるのか

ネット検索をすると「Brave 中国」というキーワードが出てくることがあります。しかし、資本関係や開発体制を調べても中国とのつながりは一切見つかりません。なぜこのような噂が立つのか、その背景とデータの安全性を解説します。
噂の出所と真相|新興ブラウザへの警戒心
噂の原因は、Braveが「広告ブロック」や「仮想通貨」という新しい技術を組み合わせている点にあります。これまでの常識とは異なる機能を持つため、「怪しい」「裏で何か情報を抜いているのではないか」という疑念が生まれ、そこから「中国製アプリではないか」という憶測に変わったと考えられます。
実際には、Braveはオープンソースで開発が進められています。プログラムの中身は世界中のエンジニアが検証できる状態にあり、バックドア(裏口)などの不正なプログラムが仕込まれていれば即座に発覚する仕組みです。隠し事をする余地がない透明性の高さこそが、Braveの特徴といえます。
データ管理の仕組み|サーバーとプライバシーポリシー
Braveは「データ最小化(Data Minimization)」という原則に基づいて設計されています。ユーザーの閲覧履歴や個人データをBrave社のサーバーに送信しない仕組みを採用しています。
仮にアメリカ政府や他国の政府からデータ開示請求があったとしても、そもそもサーバーにユーザーの個人情報が保存されていないため、提出するものがないという状態を作り出しています。カリフォルニア州の厳しい消費者プライバシー法(CCPA)にも準拠しており、法的な観点からもユーザーの権利は守られています。
世界中に展開する運営体制|国ごとに異なる「顔」

Braveはアメリカ企業ですが、世界各国の法律に対応するために非常に複雑かつ巧妙な運営体制を敷いています。私が調査して驚いたのは、日本市場に対する本気度です。
日本法人の存在|Brave Software Asia株式会社
Braveには、日本独自の法人が存在します。それが「Brave Software Asia株式会社」です。東京都港区麻布十番にオフィスを構え、代表取締役を含めた経営陣は日本人で構成されています。
多くの海外製アプリが日本に小さな連絡事務所しか置かない中、Braveは独立した株式会社を設立しています。これは日本のユーザーへのサポート体制や、日本特有の厳しい法律に対応するための意思表示といえます。
資金決済法への対応|ポイントとトークンの違い
日本法人が存在する最大の理由は、日本の「資金決済法」への対応です。海外では仮想通貨(BAT)を直接ユーザーに付与できますが、日本では規制が厳しく、交換業の登録なしに仮想通貨を配れません。
そこでBraveは、日本ユーザー向けに「BATポイント」という仕組みを開発しました。さらにbitFlyerと提携することで、ポイントを経由して正式な暗号資産を受け取れるスキームを構築しました。この柔軟な対応力こそ、Braveが信頼できる企業である証拠です。
欧州とケイマン諸島|金融と規制の対策
アメリカと日本以外にも、Braveは各国の役割に応じた拠点を設けています。
- イギリス・アイルランド:GDPR(EU一般データ保護規則)に対応するためのデータ保護拠点。
- ケイマン諸島:Brave Rewards(広告報酬)の財務処理を行うための金融ハブ。
- インド:現地の取引所ZebPayと提携し、新興市場を開拓。
このように、Braveは単一の国に依存せず、各地域の法律を遵守しながらグローバルに展開している「多国籍連合体」のような側面を持っています。
Braveを使うメリット・デメリット|客観的な評価

開発元が安全であることは分かりましたが、ブラウザとしての実力はどうでしょうか。私が実際に長期間使用して感じたメリットとデメリットを、包み隠さずお伝えします。
メリット|プライバシーと報酬システム
最大のメリットは、やはり「広告ブロック機能」と「Brave Rewards」です。
- 高速ブラウジング:余計な広告を読み込まないため、ページの表示速度が格段に上がります。通信量の節約にもつながります。
- プライバシー保護:追跡型広告(トラッカー)を自動で遮断するため、誰かに監視されているような不快感がありません。
- 報酬がもらえる:Brave独自のプライバシーに配慮した広告を見ることで、BATという暗号資産を獲得できます。
設定を一度済ませれば、あとは普通にネットサーフィンをするだけでこれらの恩恵を受けられます。
デメリット|サイト表示とウォレット連携
一方で、いくつかのデメリットも確実に存在します。
- サイト表示の崩れ:強力な広告ブロック機能が災いして、一部のWebサイトのデザインが崩れたり、ボタンが押せなくなったりすることがあります。この場合、一時的にガード機能をオフにする手間が発生します。
- ウォレット連携の手間:獲得したBATを日本円に換金するには、bitFlyerなどの取引所口座と連携し、本人確認(KYC)を行う必要があります。手軽に稼げるとはいえ、金融サービスと紐づける手続きは少々面倒に感じる人がいるはずです。
まとめ|Braveは安心して利用できる米国製ブラウザ
Braveブラウザの「国籍」に関する疑問について、詳細に解説してきました。
調査の結果、Braveはサンフランシスコに本社を置く正統なアメリカ企業であり、中国との不透明な関係は一切ありません。それどころか、JavaScriptの生みの親が創業し、各国の厳しい規制に合わせて日本法人や欧州拠点を設立するなど、コンプライアンス意識の非常に高い企業であることが分かります。
プライバシー保護を最優先したい方や、新しいWebの仕組みに触れてみたい方にとって、Braveは現状で最も有力な選択肢です。まずはサブのブラウザとして導入し、その爆速な表示速度を体験してみることをおすすめします。

